
サンゴがポリプや触手を開かずに縮こまっていると心配になりますよね。初心者でも実行できる原因の見分け方と具体的な対処手順を、優先度の高いものから順にわかりやすくまとめます。まずは落ち着いて、以下を順にチェックしていきましょう。
- 「開かない」ってどういう状態?
- 最初にやるべき緊急チェック(5分でできる)
- 主な原因と診断・対処(優先度順)
- チェックリスト(優先順・行動プラン)
- すぐできる簡単な救急処置(優先度高)
- 種別の簡単メモ(初心者向け)
- 長期的な管理ポイント(予防)
- よくある誤解
- 進行が速い・悪化する場合の対処(緊急)
- 簡単なまとめチェックリスト(印刷用)
「開かない」ってどういう状態?
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ポリプ(触手)が全く出ない、もしくは小さく縮こまっている
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日中でも開かない(夜は閉じる種もいるので注意)
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色が薄くなっている・粘膜が出ている・表面にぬるぬるが付く場合は別トラブルの可能性あり
最初にやるべき緊急チェック(5分でできる)
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照明のスイッチ・タイマー確認 — 今点灯中か?直前に電源を切っていないか。
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水温を見る(サーモで即確認) — 急変は致命的。
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比重(比重計または塩分計)確認 — 大きくずれていないか。
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目視で魚やエビに突かれていないか確認(特にハゼ、キイロハギなど)。
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水流の向き確認 — 直撃していないか、ほぼ無流になっていないか。
問題が明白(例:照明消えてる、温度急変、魚に突かれている)なら、まずその問題を解消。
主な原因と診断・対処(優先度順)
A. 照明(光量・スペクトル・点灯パターン)
症状の特徴:昼間に開かない/色あせ/白化の前兆
診断方法:ライトの点灯時間・強度を確認。ライトが故障していないか(LEDの一部だけ消灯等)。
対処:
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ライトが完全に消えているなら即復旧。
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点灯はしてるが光量不足ならライトを上げるか照明強化(徐々に、急に強化しない)。
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新しく導入した照明の場合は照明ストレスの可能性。光強度を数日かけて徐々に上げる(例:1日あたり10〜20分増やす)。
予防:導入時は「ディミング」または低強度からスタート。メーカー推奨の高さ・PAR範囲を確認。
B. 水温の異常(高すぎ/低すぎ)
症状:急に全部のサンゴが閉じる、色が薄くなる、ぐったり
診断方法:水温計の値を確認。季節や室温で急変していないか。
適正(目安):種類にもよるが24–27℃が一般的(温帯種や特定種は異なる)。
対処:
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高温(例:28℃以上で急上昇)は即冷却:ファンで表面冷却、エアレーション増やす、クーラー設置が現実的。
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低温はヒーターでゆっくり上げる(1℃/12時間程度を目安)。
注意:温度を劇的に変えない。1時間のうちに大きく上下しているなら水流や機器故障の可能性。
C. 水質(硝酸塩・リン酸塩・アンモニアなど)
症状:ポリプが出ない、色落ち、粘液分泌、時に溶ける
診断方法:テストキットで アンモニア(NH3/NH4)、亜硝酸(NO2)、硝酸塩(NO3)、リン酸(PO4)を測る。pHもチェック。
対処:
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アンモニア/亜硝酸が検出されたら即アラーム:部分水換え(25–50%)で希釈。フィルターの目詰まり・ろ材の詰め込み・新しいライブロックの未熟化が原因のことあり。
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硝酸塩高(例:>20–50 ppm):小まめな水換え、吸着剤(硝酸塩低減材)や反硝化リアクター導入を検討。
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リン酸高(PO4 >0.1 mg/L):活性炭、リン酸吸着材、照明の栄養塩過剰抑制。
予防:餌の与えすぎを避ける/底砂やデトリタスの清掃/定期水換え。
D. 塩分(比重)の変化
症状:急に閉じる、白化、呼吸が落ちる
診断方法:比重計でチェック(慣れている単位で測定)。
目標値(海水水槽の目安):比重 1.025 ±0.001(特にサンゴは安定が重要)
対処:比重が高い/低いなら部分水換えで正しい比重に戻す(配慮:温度と塩分は同時に合わせること)。蒸発による低下には淡水を足すが、蒸発分は真水(淡水)を足し、塩分が低下しないように注意(※これは淡水足し=比重低下防止のため)。比重調整はゆっくり行う。
E. 水流(強すぎ/弱すぎ/直撃)
症状:直撃で閉じる、流れが無くて汚れが付いて開かない
診断方法:サンゴ周りの流れを観察。ポリプが常に流されていないか、逆に水がよどんでいないか。
対処:
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直撃しているならポンプの向きを変える、またはバッフルで分散。
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流れが弱い場合はワット数の合ったポンプに変更、もしくは向きを調整してソフトなワイドな流れにする。
目安:サンゴ種により必要流量は大きく異なる(ソフトコーラルは中〜強、LPSは穏やかな流れを好む)。種ごとの要求を確認。
F. 餌・栄養不足(特にLPSや一部のサンゴ)
症状:長期にわたり開かない、成長が鈍い、色落ち
診断方法:種を特定してその給餌性を確認(例:マメスナは光栄養でOK、LPSは時折粒餌が必要)。
対処:適切な粒餌やブラインシュリンプの投与を少量から。過剰給餌は水質悪化につながるので注意。
G. 新規導入ストレス(アクアリウムショック)
症状:導入後数日開かない、粘膜を出すことがある
対処:静かに光を落とし、水質を安定させる。導入時はディップ処理(薬浴)やゆっくりとした水合わせを実施するとリスクを下げられる。
H. 病気・寄生虫(クリプティック/バクテリア)
症状:部分的に溶ける、粘液が大量、白い斑点や穴が出る、周囲に白い菌糸状のものが付く
診断方法:肉眼観察で局所的ダメージ、進行が速いか確認。併せて水質検査。
対処:病変が拡大する場合は隔離(キュアリングタンク)し、必要なら抗生物質や殺菌処置(市販の処方)を実施。薬剤はサンゴ種により影響が異なるため慎重に。専門フォーラムやショップに相談を。
I. 化学物質・重金属の混入
症状:突然閉じる、色が急に抜ける、他の生体もおかしい
原因例:殺菌剤、殺虫剤、シャンプー、金物(錆)などの混入
対処:即大幅な水換え、フィルターの活性炭増量、原因物質の除去。常に手や器具は淡水で扱い、誤って家庭用洗剤を使わない。
J. 共生藻(ゾノキサントラ)・日周期の問題
症状:昼に開かないが夜に閉じる、周期が狂っている
対処:照明スケジュールを安定(例:毎日同じ時間に点灯・消灯)に。突然の点灯/消灯を避ける。
チェックリスト(優先順・行動プラン)
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照明タイマー/稼働確認
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水温を確認(サーモ)→異常なら対処
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比重チェック → 調整が必要なら部分水換え
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アンモニア/亜硝酸/硝酸塩/リン酸をテスト
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水流の向き・強さを確認(ポンプの設定変更)
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餌やりの見直し(直近で過剰に与えたか)
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他の生体による物理的ダメージ確認
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サンゴの種類に応じた要求(光/流量/給餌)を確認
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必要なら部分的隔離・キュアリング(薬浴)検討
すぐできる簡単な救急処置(優先度高)
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部分水換え 30%(ただし温度・比重を合わせて)
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活性炭をフィルターに追加(化学物質吸着)
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流れの調整(直撃を避ける)
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ライトを弱める・ディミングする(急激な光でのストレスを減らす)
これらはすぐ実施可能で、改善が見られることが多いです。
種別の簡単メモ(初心者向け)
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ソフトコーラル(例:ウミキノコ):流れは中〜強、光は中程度。開かないときは水流/光の見直し。
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LPS(例:ハナガタなど):穏やかな流れ・やや強めの光。給餌を好む種も。
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SPS(例:枝状珊瑚):光と水流に敏感。安定した水質(アルカリ・カルシウム)が重要。開かない=ストレスの可能性大。
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マメスナ、スターポリプ:初心者向け。光栄養で大丈夫なことが多いが、流れを嫌う個体もある。
長期的な管理ポイント(予防)
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定期水換え(週1〜2回・量は飼育密度に応じて)
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定期的な水質チェック(pH、KH、Ca、Mg) — 特にSPSは重要。
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餌は少量・頻度を守る(過剰給餌厳禁)
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導入時はディップ&十分な水合わせ
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機器(ポンプ、ライト、ヒーター)の定期メンテ
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底砂やデトリタスの掃除(週に一度スポイトで)
よくある誤解
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「サンゴはずっと開いているべき」→ 夜や休息時間に閉じる種も多い。
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「色が薄い=色落ち=光をもっと強くすれば良い」→ 強すぎもダメ。急に上げるとショックで閉じる。
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「水換えは毎回大量が良い」→ 安定が大事。頻繁に小さめの水換えで安定維持がベター。
進行が速い・悪化する場合の対処(緊急)
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サンゴが「白く溶ける」「急速に縮む」「他の生体も不調」→ 大きめ(40–50%)の部分水換え、活性炭追加、隔離を検討。
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病変が広がる場合はキュアリングタンクでの薬浴(市販の処方を使う)。薬は他の生体に影響するため隔離推奨。ショップか経験者に相談。
簡単なまとめチェックリスト(印刷用)
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照明タイマーは正常か?
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水温は24–27℃の範囲か?
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比重は1.025±0.001か?
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NH3/NO2は0、NO3は低めか?
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PO4は低めか?
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水流は直撃していないか?
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新規導入や薬品の混入はないか?
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魚に突かれていないか?